2020年11月03日

10年後のお父さんより

IMG_20201103〜2.jpg

この写真を撮ったときから、10年が経つ。今君は10歳、小学4年生だ。さっき遊び先から帰って文鳥のサクラの世話をしている。冬場に備えた温熱器の組み立ても、説明書を読みながらひとりでこなし、ゲームをしながらいつのまにかコンピュータの扱いがうまくなり、ググるのも自在だ。好奇心旺盛で、教えなくてもどんどん自分でやってしまう。まめでない父とはだいぶ違う。

お母さんは、良いところは自分の遺伝子だという。そうかもしれないな、脚の長いところなんか。悪いところはぼくの遺伝子かもしれない、、、いやそんなことはないだろう、君は君自身なのだ。

お父さんはこのころずっと暇で、「男だって育休!」とか書かれているけれど毎日が休みで、お母さんのヨガ教室についていき、君を抱っこひもに包んで眠らせ、クラスの間喫茶店でコーヒーを飲みながら本を読んでいた。仕事はなかったけれど、畑はできたから野菜には困らなかったな。野菜の好きなお母さんはとてもハッピーだった。

それからだ、いつの間にかお父さんは忙しくなり、お母さんばかりに君の世話を任せて年中出かけるようになった。夫婦仲はあまりいいとは言えなかったな。君の疳の虫もそれが原因だったかもしれない。経済的に安定しても、それじゃ家庭を持つ意味がない。じつはつい最近まで、お父さんはずいぶん居ない時が多かったんだ。

そういえば、君が9歳になる直前におじいちゃんが亡くなる。その前に群馬まで介護に出かけていたお父さんは、ますます家に居られなくなった。畑も荒れて、せっかく田舎に暮らしている意味がわからなくなっていたな。おじいちゃんが亡くなり、いろいろな整理がついたころ、今度は「コロナ」っていう奇妙な名前の伝染病がはやって、みんなあまり外に出られなくなってしまう。仕事を失くした人もいたし、君の学校も長い間休みになった。

良かったのは、お父さんの外の仕事がほとんどなくなって、家に居られるようになったことだ。今思えばね、良かったこと。一時的にお金は無くなったけれど、もう一度あののんびりした毎日が戻ってきた。そうして家族がほとんど三食一緒に食べられるようになる。お父さんも畑に復帰した。仕事もコンピュータを使って、ちょうどいいくらいにできるようになった。

10歳になり、学校が再開して、君は勉強するのが楽しいという。病気がちだったぼくの子どものころから比べれば、うらやましいくらい充実した学校生活を送っているようだ。コロナの閉じこもりの間にオンラインゲームがはやって、小学生の遊びが家にこもりがちという問題はあるにせよ、君は何台目かの自転車を乗りつぶす勢いで遠くまで遊びに行っている。冒険心は果てしなく伸びていく方がいい。

山の中で不便な家だと思うだろうけれど、お父さんもお母さんもここを気に入って引っ越してきた。10歳ともなれば、大勢の人が集まり、歌ったり踊ったり、じっと目をつぶって座ったり話しこんだりしている、変な家だと意識するようになるだろう。大人なのに、ふたりとも平日昼間に家に居たり、突然どこかに出かけたりする。週末は今でも忙しい。それでも、一緒にあちこち行く時間は変わらず大切だ。10年前よりこの夫婦はだいぶ仲良くなっているから安心していい。

10年後、お父さんは人づきあいが好きだから、あちこちで人と知り合い、仕事で出かけて行ったり、来客があったりもする。一家でテレビに出演して、ますます知られるようになるだろう、文鳥のサクラまで。それでも何かが変わるわけじゃない。ぼくらはぼくらだ。君は大きく成長して、それらの変化を少し冷めた目で見るだろう。そしてやがてはここを出ていくだろう。両親は例外的に変な人だと知るかもしれない。君は君の好きな道をHappyに行けばいい。

お金のことは心配いらない。家もある。裕福ではないけれど、困ることはない。両親ふたりが大丈夫と決めたから、この家には心配というエネルギーはほとんどない。だから君は、その先のことを好きに考えられるはずだ。本棚に並んだお父さんが作ったたくさんの本は、まだ難しすぎるかもしれないけれど、いつか興味を持ってくれたらと思う。お父さんは毎日ふざけたばかり言っているけれど、たまにはいいことも言うのだ。そう思ってくれる人たちもいる。お父さんは応援されると張り切るのだ。

お父さん自身は10年前と変わらず、あんまり大変なことはしたくないし、できればラクして楽しく生きられればいいと思っている。でも頼まれると断れない性格だ。相変わらず家ではコンピュータで何かをやり続けている。家で見れば机にいるか、寝ているかだろう。こっそり君にまんじゅうを買って来て、共犯者に仕立てることも変わらない。

この写真で君はどこを見ているのだろう? ぼくは君の顔を覗き込んでいる。そのふたりを、10年後のお父さんが微笑ましく眺めている。そんなわけで、52歳年上のお父さんは病気もせずにまだ生きているから、とりあえずは安心していい。がんばることはしないが、楽しむことだけは怠りなく、こうして充実して毎日が送れているのは君の存在が大きいことは確かだ。それは間違いない。ひとりでいたらぼくは、とてつもなくぐうたらになってしまうだろうから。

さて、今から10年後、またお父さんはこんな手紙を書こうか。いや、それより今、10年後の君に当てて何か書くほうがおもしろそうだ。確実にぼくより背が高くなっている君に向けて。

posted by ダー at 18:24| Comment(0) | スピリチュアル・瞑想・心 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。