2020年10月14日

水城ゆうさんが亡くなって2か月たって〜鬱ヌケの記

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どうして鬱を乗り越えられたの?って君は聞いた。どうしても乗り越えられないものがあると知ったからさ、ぼくはそう言った。

水城さんが末期がんの床について、その最終段階の時期とコロナが重なった。緊急事態宣言が出て、家にこもらざるを得なくなり、仕事のすべてをオンラインに変えてかえって忙しくなった。この事態を何とかしなければ、という気合が入りすぎていたのではないかと思う。

そのころの記憶がほとんどないのも仕方がないだろう。かなりの緊張とエネルギーのやり場は、外に向かって放出することができない以上、内向せざるを得なくてぼくは鬱になった。それが5〜6月にかけてのころだ。いったん休むことと、それから取りかかったのは、何にも取りかからないことだった。

勤めていないので、スケジュールは調整を利かせることができてよかった。初期のころから妻はそうだったのだけれど、「何もしなくていいよ、いやむしろするな」というのが彼女の基本的なスタンスだ。それでぼくはリセットすることができた。と同時に、彼女がオンラインで行っていた「欧州少林気功」に加わって毎朝プラクティスするようになった。

今も毎朝行っている易筋經 Yi Jin Jingだ。释恒義Shi Heng Yi師のプラクティスは、ぼくらにちょうど合った。この16日金曜日に放映されるNHKの「あしたも晴れ! 人生レシピ」でもその場面が映されると思う(再放送23日)。全身に気をめぐらせれば、思考から解放される。座っての瞑想だけではなかなか難しい。
〔番組リンク〕 https://bit.ly/312YmEj

そうして余った時間で温泉に行き、今年は少しは畑に手をつけだした。自然の中で体を使うこと、それによって分断されていたものがつながり出す。鬱のときどうすればいいかは、長年の経験でそれとなく身に着いている。

その間にも、水城さんのがんは徐々に進行していった。4月の末にはオンライン番組でゲストに呼んで話してもらったほど元気だったし、それから先に一緒にやることが控えているはずだった。でも鬱を抜けてみると、彼はホスピスに入院していた。そこからくれた葉書がある。彼はぼくを親友と呼んでくれた唯一の友である。

彼を取り巻く多くの友人たちが、見守りのプロジェクトを始めた。多くの人が泊まり込みで介護し、飲食をともにし、それぞれができることをしていた。彼が退院した7月中旬過ぎからだ。

コロナが収束しないので、ぼくは車で高速を走り、国立の家まで何度か行った。ほとんどはただ居ただけだけれど、寄り添うっていうことがどんなことなのか、多くの友人たちの働きの間で感じられた。そういった看取られ方があるのを知った。

そこで久しぶりにコツンと再会した。懐かしい、とても親しみを感じる人と。その人に先日聞かれた。ぼくはいろいろ話したけれど、このことは覚えている。「どうして鬱を乗り越えられたの?」「どうしても乗り越えられないものがあると知ったからさ」

運命を受け入れたとき、霊が受肉化する。水城さんは、時間を失くしたコロナの時期、ぼくたちに時間を与えてくれたのだと思う。彼とともに生きることで、時間には生きるということしかないのを知った。死で時間は止まる。彼といることで、時間の密度はとてつもなく濃くなった。ぼくらの生は充実した。

8月15日に彼が逝って、ぼくはお骨を拾った。そのときはっきりと、彼が肉体の拘束を離れ、どこにも臨在できる自由を獲得したことを知った。だから、気功しているときに彼がいつでも「ぼくの体として」存在するのがわかる。それは晩年不自由だった彼が、今や自由を獲得し、時間の縛りからも解き放たれたということだ。

今ぼくは、「最初から何も持っていない」と歌うシンガーソングライター藤井風の歌詞を思い出している。「すべて忘れて帰ろう、何も持たず帰ろう…去り際の時に何が持って行けるの、一つひとつ荷物手放そう」

「忘れる」ことで故人は血肉化する。「忘れ去る」のではない、忘れるのは記憶が心から身体へと移る、霊的な瞬間だ。驚くべきことにまだ二十代前半の風くんは、すでに喪失を知っている。そして、「忘れよう」と寂しさの向こうを歌えているのだ。そっと声を合わせて歌ってみる「すべて与えて帰ろう、何も持たずに帰ろう」。今ここから、ぼくはもう帰っていこう。すがすがしい決意の風を感じながら。
posted by ダー at 13:39| Comment(0) | スピリチュアル・瞑想・心 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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