2020年07月18日

私自身が生きているということの歌なのだ

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生と死が、あちらとこちらで扉を閉じたり開いたりしている。
「父の骨にジャズ聴かせつつ帰るトレーン忌」

去年7月17日、ジョン・コルトレーンの命日にぼくは、父の遺骨を車で自宅まで連れてきた。そのときに浮かんだ俳句を、今日コルトレーンのジャズを聴きながら思い出している。あれは暑い日だった。今日は梅雨の続きで寒々とした一日だった。

今年の今日、友人の水城ゆうさんが、ホスピスから退院した。ぼくが知るかぎりホスピスから退院した人はいなかったので、とても嬉しい。快挙と言っていいほどのすがすがしさを感じているが、もちろん手放しで楽なわけはない。ただ、いのちの寿ぎを感じるのだ、今確かに生きている彼のことを思うと。生きていることはそれだけで、なんて無条件に良いのだろうか。

コロナの心配などささいなことだ。これからのことなどどうでもいい。過去起こったことの一切にも後悔はない。ただここで祝うことの他に何があるのだろう。実際今日は、その他のことはすべておあずけだ。生きている、それだけですべては肯定される。それさえ確認できれば、ここから先へはどんな方向へでも踏み出していっていい。

「おれは歌だ、おれはここを歩く」は、画家秋野亥左牟(いさむ)の絵による、アメリカインディアンの口承詩の一冊である。それは生命を全肯定する力強い歌だ。人と自然が分かれていない。人と人とが分かれていない。現代人が野生を失い、その魂がしなびたのは、すべてから「切り離されている」からだ。無論ここで私は、歌そのものだ。歌と自分は分かれていない。だから、「ここを歩く」と高らかに宣言できる。

私はここにいる、ここで生きている、何にも恥じない、これが私だ。そう歌える人がどれだけいるだろう? 何かに弱められてはいないだろうか? いつの間にか感情や感覚を「こうあるべき」しつけや教育に乗っ取られ、言われるがまま尻尾を振ってはいないだろうか? おまえの大事な反抗はどこへ行った? あの気高い反骨の精神は。

おまえの本音は何なのだ? それさえもニュースの数字やおしゃべりな評論家の言葉に翻弄され、わからなくされ、まるで自分が間違っているかのように思い込み、自分を虐待する。

そういうときには、悲しみの歌を歌え。私は私がわからない、私を見失ってしまった、それが今のおまえの歌なのだ。膝を抱えて、地面を打ちながら歌え。そうして声が枯れるまで歌え。歌とおまえがひとつになったとき、それが立ち上がるときだ。「おれは歌だ、おれはここを歩く」

スピリチュアルズ(黒人霊歌)はそうして出来上がった。歌の芯には神がある。神が宿った歌には分離がない。アメリカ南部を歩いて旅したとき訪れたテネシー州のいくつかのバプティスト教会では、すべての信者が一体となって同じリズムで激しく踊っていた。小さな子どもまで。トランスに入り卒倒する婦人が続出した。それは神がかりの時間だった。あの宗教的熱狂は忘れられない。

ぼくらにはある種の熱狂が必要だ。その芯が台風の目のようにじつに静かで、その空(くう)に神の微笑みが宿るような。呼吸に聖霊が乗るような。生きていることは、その中心が穏やかな空である、熱狂であり、祝祭である。だから、生きていることを夢中で歌い、踊る時間が必要なのだ、「我」を忘れて。

生きているのは、無条件に良いことだ。欠落感を埋める必要はない。承認されることもいらない。ぼくらは何も欠損せず、失っていないのだから。だからぼくはここを歩く。ぼくはここに生きている。それはじつに大らかな歌なのだ。
posted by ダー at 00:50| Comment(1) | スピリチュアル・瞑想・心 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私は生きている。だから嘆く。嘆きの歌を歌う。
「アカデミック、〇〇学、大学」という厚い壁と固く冷たい鉄格子の中にある舞台の上で。
すると、舞台の照明は消され、私は舞台から引きずり降ろされ、壁の向こうに追いやられ、二度と来ないで頂きたいと丁寧に追い出された。
私は生きている。だから踊る。生かされている喜びの舞を。
壁も柵もない緑の牧場で。裸足になって、風に吹かれて、自由に、鳥たちの歓喜の歌に合わせて。

自分がEXILEにされて知る、悲しみ、後悔。しかし、EXILEになって知る、喜び、恵みがあった。

それは、今、ここにある豊かな驚きに満ちた現実。 今を生きる全ては今、目の前に備えられている現実を見る。 なぜ、EXILEになったのか、それは、明日の思い煩いを解決するために厚い壁の中に住もうとしたからだ。 

人は誰しも過去と未来の壁に覆われた国から追われたEXILEにされてこそ、今を生きる国に辿り着き、そこで憩うものとされるのかもしれない、と思う今です。

Posted by かざときみこ at 2020年07月21日 11:54
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